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漫画ヒーロー列伝―時代劇、脱浪曲で多様化

いしかわじゅん氏による、日経夕刊連載第3回。

赤胴鈴之助・カムイ・織部…時代劇ヒーロー

日本人には馴染み深い浪曲講談の時代から時代劇は人気があり、戦後漫画でもスーパーヒーローが登場した。
「赤胴鈴之助」は1954年、戦後の混乱が落ち着いてきたころ登場した。漫画が大ヒット、次はラジオドラマになりテレビドラマになり映画になりキャラクター商品が発売されと、今でいうメディアミックスでヒットを大きくした。

1961年には少年サンデーから「伊賀の影丸」が現れた。赤胴鈴之助は浪曲講談の影響が強かったが、影丸は対抗戦方式を取り入れチームを組み強い相手と闘って勝ち上がっていくという、現在の少年漫画の原型がここで確立した。
1964年に「カムイ伝」が登場する。江戸時代を舞台に階級闘争を描いた群像劇だ。70年安保当時はバリケードの中の学生が、みんなこれを読んでいたのだ。
並行して1967年には、さいとうたかをの劇画「無用ノ介」も現れる。劇画という新しい表現、これまでの時代劇とは違うマカロニウェスタンのような活劇であった。

1970年からは「子連れ狼」の拝一刀が現れる。体制側の柳生一族に楯突く闘士である。
漫画は大ヒットし、テレビドラマと映画になり、主題歌までヒットするブームとなった。類似の時代劇漫画が漫画誌で量産され、時代劇ブームを引き起こした。
この「子連れ狼」はアメリカに早い段階で輸出され、ロングセラーとなり、後にアカデミー賞にもノミネートされたハリウッド映画「ロード・トゥ・パーディション」のモチーフにもなり、アメリカの漫画好きには評価された作品であった。

この後、ブームの反動から時代劇は描かれない時期が続いた。しかし1994年から少年ジャンプで始まった「るろうに剣心」が、単行本累計5000万部を売るメガヒットになり、また時代劇が増え始めた。かつての時代劇とは違い、どこか知らない国の物語のようだった。ゲームやアニメの影響か、剣と魔法のヒロイック・ファンタジーを日本の時代劇で描いたような物語が多かったのだ。

本格時代劇がまた始まったのは1998年。「スラムダンク」の後の作品として井上雄彦が吉川英治の「宮本武蔵」を選び、「バガボンド」として連載をスタートさせた。
吉川武蔵を大胆にアレンジした作品は、連載開始10年にして未だ先が見えない大河連載である。
「へうげもの」は、織部焼に名を残す古田織部の物語である。織部は茶碗がほしい、茶入れがほしい、釜が欲しいと、もう物欲の塊で、彼の視点から、信長、秀吉、家康の時代を描いていく。

2008/11/20, 日本経済新聞 夕刊より

漫画ヒーロー列伝―動くアトム、操る鉄人28号

いしかわじゅん氏のシリーズ第2回。

・ロボットものに道付ける、科学者の目標に

戦後日本のロボット漫画は、まず自分の意志で動く形で始まった。
『鉄腕アトム』は1952年から『少年』で始まった。この人型のアトムがいたから、その後もロボット漫画は増え続け、日本の科学者は二足歩行ロボットの開発に拘り続けてきた。

アトムに並ぶヒーローは『鉄人28号』。横山光輝が『少年』で、56年から連載した巨大ロボット漫画だ。しかしこの鉄人には意志がなく、リモコンがあって、それを持ったものが鉄人を意のままに操ることができた。

このアトムと鉄人が、この後のロボット漫画を決定づける。
63年には、『8マン』が始まりアニメにもなって大ヒットしたが、作者の桑田次郎が拳銃の不法所持で捕まり、主題歌を歌った克美しげるが殺人で捕まりした受難の作品であった。
69年には、大ヒット漫画『ドラえもん』が始まる。作者の藤子・F・不二雄は、手塚治虫の直系。体形はだいぶ違うがドラえもんは、アトムの遺伝子を継いでいる。

鉄人に続く巨大ロボット永井豪の『マジンガーZ』が72年から、少年ジャンプで連載された。
鉄人は遠隔操作だったが、マジンガーは、操縦者の兜甲児が「パイルダー、オン!」のかけ声と共に、ホバー・パイルダーでマジンガーの頭部に乗り込み、直接操縦する。

・ハリウッドに影響
この乗り込み型は画期的で、後のガンダムやエヴァンゲリオンにもつながってくる。
永井豪の師匠の石ノ森章太郎も、このジャンルは得意で、72年に少年サンデーで『人造人間キカイダー』を描き、73年には少年マガジンで『ロボット刑事』を描いている。これはハリウッド映画の『ロボコップ』にも影響を与えたのではないかと囁かれた。
そして80年には鳥山明の『Dr.スランプ』が登場する。科学者の則巻千兵衛が作った眼鏡っ子アラレちゃんは、少年ジャンプで超メガヒットになった。

その後、大ヒットしたロボット漫画はない。科学技術も進みロボットに夢を託す時代ではなくなってしまったんだろうか。
しかし、ハリウッドが『鉄腕アトム』をアストロボーイ』というタイトルで、フルCGでつくり2009年の公開。まさかハリウッド版『ゴジラ』みたいにならないか、ちょっと心配。

ヘッドラインは2008/11/13, 日本経済新聞 夕刊

電子コミック急伸、メイド喫茶は縮小 07年度の「オタク」市場

矢野経済研究所による「オタク市場」に関する調査結果 2008
「オタクカルチャー」のメジャー化定着化が進み、電子コミック、同人誌、フィギュア、コスプレ衣装、鉄道模型市場が拡大した。

 ◆2007年度の電子コミックの市場規模は、前年度比147.5%と大幅増の250億円に 
 ◆2007年度の同人誌(同人誌即売会、同人誌取扱店、ダウンロード販売で扱っているもの)の市場規模は、前年度比13.5%増の553億円に
 ◆2007年度のフィギュアの市場規模は、前年度比8.3%増の260億円に
 ◆2007年度のコスプレ衣装の市場規模は、前年度比6.8%増の360億円に
 ◆2007年度の鉄道模型の市場規模は、前年度比5.6&増の152億円に

この調査における「オタク市場」とは「オタクの聖地」秋葉原等で扱われることが比較的多いコンテンツ及びその関連コンテンツを対象として、販売店、業界団体にヒアリングした。

参考リンク:「オタク市場徹底研究 2008」

漫画ヒーロー列伝―星飛雄馬から上杉達也へ

日経夕刊のいしかわじゅん氏のコラムより
社会の空気を映す人気ヒーローの歴史を振り返る1回目は「スポーツ漫画」

「脱スポ根 主役の姿変遷」

・最初は牧歌的

伝説のトキワ荘のリーダー格の寺田ヒロオは野球漫画が得意だった。
昭和30年代半ばに少年サンデーで連載された『スポーツマン金太郎』は金太郎がジャイアンツに入って活躍し、ライバルは桃太郎と、実に牧歌的だ。
昭和41年からは少年マガジンで原作梶原一騎、漫画は川崎のぼる『巨人の星』が始まる。主人公は星飛雄馬。
牧歌的な空気は消え父と子の相克がテーマになり、飛雄馬は血反吐を吐き腕の筋肉を壊し、野球生命まで絶たれてしまう。
水島新司の『ドカベン』は、「野球ってのはこんなに楽しい」という見本。

・格闘系も、人気のあるジャンル

昭和26年の柔道漫画『イガグリくん』は大ヒットし、作者の福井英一は手塚治虫を嫉妬させるほどの人気を得た。シンプルな勧善懲悪型ヒーローだが、現在の格闘漫画の原型を作った。
昭和42年から始まった『柔道一直線』では、主役の一条直也の名前よりも必殺技の地獄車のほうが有名だった。原作者は梶原一騎。
同じ梶原一騎原作のプロレス漫画『タイガーマスク』では、主役のタイガーマスクは実際のプロレスにも登場した。

・梶原一騎が導く

ちばてつやが作画を担当した『あしたのジョー』は、『巨人の星』と同時期に同じ少年マガジンで連載して共に大ヒットした。原作者も同じ梶原一騎であった。
このころの梶原一騎は、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで、その作風は「スポ根」と呼ばれ、昭和40年代から60年代にかけて漫画界を席巻していた。スポーツとは「根性」のことだった。
それを爽やかに覆したのが、昭和56年に始まった、あだち充の『タッチ』。
主役は上杉達也であるが、彼に根性はなく、スポ根は単なるパロディの対象になってしまっている。
近年のヒーローでは、世界のサッカー選手が愛読した『キャプテン翼』の大空翼、バスケット漫画の『SLAM DUNK』の桜木花道、『テニスの王子様』の越前リョーマと多士済々だが、既に梶原一騎の呪縛も解けている。

ヘッドラインは2008/11/06, 日本経済新聞 夕刊

ゲームや漫画で入門、歴史好き女性が急増

好きな馬は赤兎馬、座右の銘は天下三分の計。歴史に詳しい才色兼備の「歴史アイドル(歴ドル)」が人気だ。歴史関連イベントなどではひっぱりだこになっている。

歴ドルが誕生してきた背景には、三国志や戦国時代をテーマにしたゲームや漫画をきっかけに原作本を読み始め、歴史通になる女性が増えていることが挙げられる。
歴史書の肖像画ではいかつい風貌の武将も、ゲームの世界では現代風の美形に仕立てられ、キャラクター設定が女性の心をつかむ。
三国志を題材にした「真・三國無双」、戦国時代が舞台の「戦国無双」の発売元のコーエーによると「女性購入比率はいまや3~4割にのぼる」

歴史専門書店の時代屋神田小川町店では2006年のオープン当時には2割だった女性客比率が直近では4割強になった。
今年、女性に一番人気の武将は石田三成という。
「男性は豊臣秀吉など天下人を好む傾向があるが、女性はゲームの世界での見た目だけでなく、その武将の生き様も重要。片倉小十郎のような忠臣の人気が高い」(同店女将の宮本みゆきさん)

10月27日夜、新宿で開かれたトークイベント「三国志ナイト」では、諸葛孔明に扮した歴ドルの美甘子(みかこ)さん(24)ほか、三国志愛好家のタレントらが集まって、三国志にまつわる蘊蓄話が繰り広げられた。約50人を収容する会場は立ち見客が出るほどの盛況。
美甘子さんは雑誌のグラビアなどの仕事をしていたところ、今夏初めて歴史イベントに呼ばれ、出演してから歴ドルと呼ばれるようになったという。アイドルって呼ばれる人は世の中にたくさんいるけれど、得意分野を生かしていかないと、この世界では生き残れない」と美甘子さんは話す。
歴ドルファンの24歳の男性会社員は「テレビで人気のおばかタレントとは違う知的なところも魅力的」という。
歴ドルは容姿だけでなく、歴史ファンに知識が認められるのが条件。歴ドルの名付け親といわれるアパレル通販の赤兎馬の柄澤隆志社長は「自称は許されない」と言い切る。求められる知識は、一夜漬け程度ではおぼつかない。

三国志派の歴ドルとしては小日向えりさん(20)の人気が高い。現役の横浜国立大の学生で、「理想の男性は趙雲。文武両道でもおごらないところなど異性として魅力を感じます」と話す。小日向さんは「レッドクリフPartI」の試写会イベントに呼ばれ、自分でデザインしたコスプレ衣装も披露した。
小日向さんのファンの半数は女性で「歴史ファンはディープな人の集まり。そんな人たちを前にして歴ドルなんて呼ばれていいのかと思いましたが、意外と喜んでくれてほっとしています」と語る。

ヘッドラインは2008/11/05, 日経MJ
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