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「アキバ」が欲しかった、蘇寧電器、ラオックスを傘下に、8億円で「聖地」に足場

中国の家電量販最大手の蘇寧電器集団(南京市)が経営再建中のラオックスの筆頭株主になる。約8億円を投じて発行済み株式の約27%の株式を取得する。
数ある家電量販の中で、なぜラオックスだったのか。実はサブカルチャーの聖地「アキバ」が欲しかったからだ。

「今度、秋葉原に行ったときには、蘇寧で買い物することになるね」。蘇寧がラオックスを傘下に収めたというニュースが現地の新聞で報じられた25日午後、中国のネット上に早速こんなスレッドがたった。
蘇寧によるラオックスへの出資は中国の消費者の間でも関心を呼んでいる。アニメやゲーム、漫画などサブカルチャーの聖地の「秋葉原」の名は中国の若い消費者に浸透しているからだ。
ラオックスの知名度が高いかどうかは不透明だが、蘇寧が秋葉原に拠点を構えたという強烈なメッセージが国内の消費者に伝わったのは間違いない。
「ラオックスの買収を通じて日本のアニメやゲームなどの仕入れコストが変わるのか」。蘇寧が24日に南京市で開いた会見で中国人記者からこんな質問が飛び出したことからもあきらかだ。
 「ラオックスに投じる資金の約5700万元は我が社の純資産の1%にも満たない」。蘇寧の孫為民総裁がこう語るように、ラオックスへ投じた費用対効果は大きい。

中国の家電量販店の営業形態は旧態依然のままだ。「出展料を徴収した上で、メーカーごとに場所を割り振ってメーカーの販売員に販売させてもうけをだす。さらにリベートまでも要求する」と日本の家電メーカーの営業幹部は打ち明ける。
店内は商品ごとに細かくメーカーによって売り場が仕切られ、専属の販売員が配置される。極論すれば、他社をけなして自社をほめて購入を促す仕組み。
しかし中国にも中間層が育ちはじめ、ネットなどで海外の情報にも触れる機会も多くなった。2007年に中国に出店したベストバイも当初は中国流の販売手法だったが、異なるメーカーの比較購買ができるカテゴリー別陳列に変更。自店の従業員が販売する、日本では当たり前の売り方に改めた。
蘇寧はラオックスを傘下に収めたことで、日本式の販売手法や陳列方法という解決策を比較的容易に手に入れることができる。

蘇寧は経営破綻した米家電量販2位のサーキット・シティのM&Aを検討していた。
資産査定などを進めて前向きに検討した結果、1億ドル(約100億円)という価格が浮上したが、創業者の張近東董事長が「買わない」決断をしたという。
単純に価格を比較しても意味はないが、同じ経営再建という課題を背負う企業だけに、どちらの案件が蘇寧にとって意味があったのか。
成長市場の中国で最大手の座を固めようという蘇寧にとって必要だったのは「経営規模」ではなく「経営効率」だ。だからこそ「プライドをくすぐる米国市場」ではなく「相乗効果を期待できる日本市場」という今回の選択は理にかなっている。

蘇寧が打ち出す再建計画では、今後1年半で現在10店ある店を秋葉原の5店に集約。うち2店で家電、残る店でデジタル製品、アニメ、楽器をそれぞれ扱う。「家電を中心とした娯楽生活店」として3年以内の黒字化をめざす。「こちらの予想外に蘇寧の評価が高いのがデジタル楽器」(古田光浩経営企画本部長)といい、品ぞろえを再構成することになりそうだ。
ただ、過去いっこうに再建が進まなかったラオックスに対し、周囲の目は冷ややかだ。国内のある量販幹部は「蘇寧には資金があっても、ラオックスの体質を変えるノウハウがあるわけではない」と指摘する。
山下巌社長は25日の記者会見で「ラオックスは日本の家電流通の発展に貢献し、栄光に輝いた時期もある。社員にはそのDNAがあり、秘めた能力を開花させたい」と語っが、今のラオックスに必要なのは過去の栄光を捨て、新たな一歩を踏み出すことだ。
「残念だ。創業理念を知っている人はどれだけ残っているのか」。26日の株主総会に出席した男性(59)はこう漏らした。今はすでにない「ザ・コンピュータ館」は時代の最先端の店だったと男性は言う。「(アニメやフィギュアなどの)アソビットシティではなく、秋葉原の電器専門店として頑張ってほしい」

2009/06/29, 日経MJより



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