約7000社の日系企業が進出するタイでは、日本語学習者はここ10年で2倍の7万人超に急増したが、教材不足が課題だった。そこで日系企業や団体が若者に人気のアニメや音楽、図鑑や絵本などの教材を提供し、日本語学習を楽しく継続してもらい、優秀な人材確保につなげようと、学生の日本語学習を積極的にサポートする動きが出始めている。
大学や高校が集まるバンコク中心部のアソーク地区にある国際交流基金バンコク日本文化センターの図書館が今年4月に改装され、「ポップカルチャーコーナー」が新設された。この新設コーナーではJポップの新曲が毎月40曲配信され、自由に聴ける。音楽や映画のDVD、マンガ、ファッション雑誌も無料で閲覧できる。
「日本ファンを増やすためにも、日本語に接する機会と環境を広げたい」と同センター。
タイでは日本発のモノや文化はすでに深く定着している。日本料理店は1000店を超え、米ニールセンが今年実施した「タイ人が選ぶ好きな料理」調査では、日本食が26%とタイ料理に次ぐ。バンコク市内の紀伊国屋書店など日本語書籍店では、マンガの売り上げの半分以上をタイ人が占める。
日本への観光旅行客数も2008年は空港閉鎖などの混乱がありながら、前年比15%増の19万1900人と過去最高で、リピーターの富裕層も多い。
タイの日系企業は約50万人の雇用を抱える。学生らの間で「日本語は就職に有利だ」との認識は浸透し、今やタイの大学、高校、中学、専門学校のうち300校が日本語講座を構える。
予算の充実した有力大学では日本語の教科書や副教材も豊富だが、地方の大学・学校などは副教材の少なさが悩み。漢字仮名交じりの日本語は難しく、あきらめて英語や中国語の専攻に転向する学生も多いのが実情。
「地方では中国政府が立派な教室を構え、多額の教材費を投じている。これに比べ日本語の学習環境は貧弱の一語に尽きる」(財団法人・日本タイ協会吉田千之輔理事長)と危機感を募らせる。
同協会は今月15日、小学館、日本児童教育振興財団、三井倉庫と共同で、バンコクのアンスナンタ・ラチャパット大学に初期の学習者向きの図鑑や日本文化・歴史に関する書籍約300冊を寄贈した。
「日本を理解するタイ人を増やすのは将来の日本人のためになる」(吉田理事長)と強調する。日タイ協会は今後も日本企業や個人から学習図鑑や歴史参考書などを集めて、予算の少ない大学に寄贈する計画を進めていく。
2009/06/21, 日本経済新聞 朝刊より