週刊東洋経済2009年7月4日号(6月29日発売号)の記事要旨。
BS/CS有料放送の受信をコントロールする目的で設立された、B-CAS(ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ)という民間企業がある。
NHKと民間キー局系BS会社、東芝、パナソニック、日立製作所が出資している。取引先の大半は出資企業で、最近までは業績などは非開示だった。
社員17名のほとんどは出資先企業からの転籍組。2009年3月期の売上高は98億円で、8割はB-CAS方式の使用料として放送事業者が収めたもの(B-CASカード1枚あたり485円)
残りの2割はテレビメーカーなどが支払うカード支給手数料(B-CASカード1枚あたり106円)
支払いはカードの調達費用で、複数の印刷会社に1枚あたり426円を支払っているとされる(東洋経済調べ)
2009年3月期は放送事業者からの利用料引き下げに応じて原価低減で吸収できず、経常利益は9000万円の赤字に転落している。
2009年3月の累計では6291万枚と、カードの発行枚数は順調に伸びており、政府が目指す地デジ受信機1億台までは伸びる成長市場だ。
このB-CASカードがないとBS/CSの有料放送はもとより、地デジの録画はおろか視聴も出来ない仕組みになっている。技術的には新規参入も可能なはずなのだが、同業者は存在しないし参入の気配もない。B-CAS社では「最大の取引先である放送事業者が新規参入を求めるか疑問。参入もうまみはないだろう」と、(管理人注:JASRAC問題で聞いたのと似た)余裕の態度だ。
このB-CASカードを巡って、総務相の諮問機関・情報通信審議会で議論が起きている。
きわめて公共性の高い地上波放送の視聴に、一民間企業が独占してコントロールする違和感が論じられ、3月の参院総務委員会では民主党議員がB-CAS社の独占禁止法抵触について質問をした。公正取引員会局長は「新規参入を制限すれば抵触のおそれがある」と答弁し、JASRAC問題と同様の関心を示している。
B-CAS社とB-CASの仕組みがテレビ放送の視聴をコントロールすることに、法的根拠は全くない。
審議会の下部組織「デジタル・コンテンツの流通の促進に関する検討委員会」(通称:デジコン委)の関係者からは、B-CAS体制で最も利益を上げているのは、最も多くの人員を転籍させて、さらに任意とはいえB-CAS利用者の個人情報を収集し受信契約のないテレビに契約を督促するテロップを表示するNHKではないかとの声が聞こえてくる。
デジコン委では7月中旬にカード以外のソフトウェア方式での著作権保護策を提言する見通しで、低コストかつ小型化可能な受信機器の開発に向けて歓迎するメーカーの声がある。
地デジ完全移行を前に、社会インフラの放送に一民間企業が独占発行する1枚のカードが受信制限をかける不透明さは払拭されなければならない。
週刊東洋経済2009年7月4日号(6月29日発売号)より
※コンテンツ流通を阻害するように見える、JASRAC問題もB-CAS問題も同梱かもしれない。旧態依然の情報コントロール体制、メディア覇権への飽くなき欲求から抜け出せないコンテンツ利用者側(この場合は放送局・放送事業者)の意識改革が必要だろう。
週刊 東洋経済 2009年 7/4号 (Amazon)