「アニメ、政治材料にしないで」、殿堂論争を現場が批判

衆院選で賛否が分かれている「国立メディア芸術総合センター」(仮称)整備を巡る騒動に、制作現場の若者らが冷ややかな視線を投げかけている。
生活苦にあえぐアニメーターらは「お金を出すなら現場に使って」「アニメを政治の材料にしないで」と、与野党双方に厳しい訴えの声を向けている。

同センターは漫画などを収集・展示する施設で、2011年度中の開館を目指している。2009年度補正予算で117億円の建設費を計上。自民党は「コンテンツ産業の振興に必要」と主張するが、民主党はマニフェストで無駄遣い予算の例に挙げ、「国営マンガ喫茶」などとして建設に反対している。
 
こうした選挙戦での論争を、東京都杉並区のアニメ制作会社で動画を担当する男性(25)は「ただ金を出せばいいという考えなら反対だ」と批判する。4年制大学の法学部を卒業後、アニメの専門学校に2年間通い、渋る親を説得して就職した。念願の業界だが古い体質も目に付くといい、「あいまいな契約関係の法整備や技術面のサポートなど、国にやってもらいたいことはほかにたくさんある」と話す。
今年から原画制作を担当している女性(21)は「単なるハコモノづくり」には反対の立場。国営スタジオやアニメ映画祭などへの資金拠出など「現場が盛り上がるようなお金の使い方をしてほしい」と訴える。
「現場のことを知らないのに、アニメを政治の材料に使っている」。杉並区のアニメーター女性(26)は議論そのものに冷ややかだ。「漫画好きの麻生太郎首相は自分の得意分野を利用しているだけで、民主党はそれを逆手に取って反対しているだけ」と映る。

若手アニメーターの多くは厳しい労働環境に置かれている。日本アニメーター・演出協会が昨年度、約2000人を対象に実施した初の大規模調査によると、20代の平均年収は約110万円、30代でも約213万円だった。「才能ある人材が就職したがらない」「海外への発注が増え、国内の空洞化が進む」。同協会が5月に都内で開いたシンポジウムでも将来を不安がる声が相次いだ。

コンテンツ産業に詳しい東京大の妹尾堅一郎特任教授は「一番怖いのは、何もしないまま日本のコンテンツの力が弱まっていくことだ。与野党とも、冷静で前向きな議論をしてほしい」と指摘している。

2009/08/22, 日本経済新聞 朝刊より

Comments are closed.