歴女の次は「刀剣ガール」、刃紋や鋼の輝きにまなざし真剣

日本刀に興味を持つ若い女性「刀剣ガール」が増加している。
刀を展示する博物館などで女性客が増えているほか、プロを目指す女性もいる。男性の愛刀家のように、うんちくを語るより、純粋な美術品としての美しさに重きを置くのが特徴。歴女ブームも後押しし、居合道や殺陣など刀を使ったスポーツも人気となっている。

岡山県瀬戸内市の「備前おさふね刀剣の里」
野口沙耶さん(24)は昨年4月から、はばき(日本刀のつかと刀身の間に取り付ける金具)を作る職人「白銀師」になった。
高校時代に博物館で見て以来、日本刀の魅力のとりこに。一時は刀鍛冶を目指したが「鉄の固まりを片手で持ち上げるなど腕力が必要で、女性には不利」と断念した。「すっとさやに収まる、しっかりしたはばきを作れる職人になりたい」と話す。
今年5月にインターネット上の刀剣商「刀剣小町」を開設した塚田志穂さん(35)も刀好きが高じてプロになった1人だ。フランス滞在中に美術館で見た日本刀の美しさにほれ込んだ。
東京・代々木の刀剣博物館の学芸員は「ここ数年、女性から『刀の職人になりたいのですが、どうすればいいのですか』という相談を受けるようになった」と打ち明ける。

プロを目指す女性だけではなく、刀剣目当てに博物館や美術館を訪れる女性も増えている。
「備前おさふね刀剣の里」のスタッフは「今年に入って20~30代の若い女性客が来るようになった」と驚く。今では4割程度が女性客。若いカップルも多い。
「中高年の夫婦では、夫が夢中になって妻はつまらなさそうにしているのに、最近の若いカップルは女性も一緒に楽しんでいる」とスタッフ。
歴女ブームも刀剣への興味を後押しする。美術館で刀を見るのが趣味の横浜市の主婦(34)は、新撰組の沖田総司らが好きで、小説や漫画を読みあさる。好きな刀は、沖田の愛刀として描かれる菊一文字則宗。「日本刀は高くて手が出ない。包丁をプロの研師に出してがまんしている」と話す。
安くても数十万円はする真剣だが、購入する女性が増えている。瀬戸内市の刀工、上田範仁(刀工名 上田祐定)さんには、この2~3年で20~30代の女性から作刀の依頼が来るようになり、現在では顧客の約1割が女性。「先日も20代前半の会社員風の女性3人が見学に来て、短刀を注文した」と話す。

日本刀にまつわるレクリエーションも評判だ。時代劇の殺陣を教える「高瀬道場」(本部・東京都府中市)では、女性の希望者が多く、昨年4月から女性専用コースを設けた。
幕末の志士の生き様にあこがれ習い始めた女性会社員(29)は「真剣でなくても、刀を持つと気分が引き締まって気持ちいい」
競技用の刀を使う居合道も人気で、千葉大学の居合道研究会では、3年前には1人もいなかった女性部員が現在は5人。
居合道をたしなむ女性会社員(23)も「いつかは真剣でやりたい」。自宅には祖父が残した日本刀が1振りあり、油を差して手入れをしながら刀身を眺める。
これらの女性愛刀家に共通した実感は「刀を眺めたり、持ったりするときの緊張感がいい」。触れれば切れる張り詰めた非日常的な感覚を欲しているのかもしれない。

銃刀法では刃渡り15センチ以上の刀剣類を持つことを禁じているが、美術的価値があると認定され都道府県の教育委員会に登録した日本刀は所持が認められる。
真剣を扱えばけがをする危険もあるうえ、手入れを怠れば美術的価値のある刀剣も劣化してしまう。専門家は「本当に責任を持って管理できるか考えて購入してほしい」と話す。
刀工になるには、師匠について5年以上の経験を積み、文化庁の研修を終了すれば作刀が認められる。かつては女性が作刀の現場に入ることはタブーとされた。現在はそれほど厳格ではないが、女性の刀工はまだ出ていないという。

2009/10/16, 日経MJより

参考リンク:
備前おさふね刀剣の里
刀剣小町
刀剣博物館
刀工 上田祐定
高瀬道場
千葉大学居合道研究会

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