12日公開のシリーズ10作目のアニメーション映画「ONE PIECE STRONG WORLD」で、原作者の尾田栄一郎が初めて製作の総指揮を執った。日経が尾田栄一郎へのインタビューを掲載している。以下、その要旨。
原案を考え120枚超の設定画を描き下ろし、キャラクターをデザインした。
「少年をワクワクさせたい」と、当代きっての人気漫画家のこだわりが色濃く反映する作品になった。
尾田は充実した表情で「出来は大満足。絵がこれだけ原作に近かったこともないし、少年の心に火をつける作品に仕上げてもらった」と語った。
当初は「ストーリーを考えて」という製作側からの依頼を断り続けていたが、熱意に根負けし、「映画の主題歌をミスチルが歌うなら」という希望がかなったことで、約2年半前に引き受けた。
昨年3月、大まかな粗筋が完成したが、「泣かせれば良いという世間の風潮に乗ってしまった。お客をだました安いストーリーに見えたから」とすぐに自ら破棄した。
尾田は「僕の漫画の基準は、15歳のころの自分が面白いと思えるかどうか」という。
凶暴な昆虫や動物が年中けんかする島があって、そこにルフィの一味を放り込めばどうなるだろう。吹っ切れた後はペンがすらすらと進み、約3カ月で描き終えた。
この後は連載をたびたび休載にするほど、深く映画にかかわる。こだわったのはキャラクターのデザインで、それをどうアニメで描くかだった。
「六角形や十字形でも顔になるのが漫画の面白さ。子供は現実にないものを見たいわけで、実写で再現できる少年漫画はパワーがない」と言い切る。
今作では、アニメでしか表現できないキャラを考え抜いた。漫画にないアニメの特性は音と色。敵役の「金獅子のシキ」は足が刀で、歩けばキンと音が鳴る。島の生き物は虎が青色、イカがダイダイ色と一見変だが、どことなく愛着のわく動物を生み出した。
続いて力を注いだのは、アニメーターにキャラをうまく描いてもらうこと。「絵が描きたいから漫画家になった」「描きたいシーンをより良い絵として見せたいから、物語や演出を考える。感動を描く作家と言われるけれど、それはスパイスでしかない」。そう語るほど絵に思い入れがある尾田の提案で、本作では作画監督の選考会を行った。
最も原作に近い絵を描けるのは? ヒロインのナミを一番かわいく描けるのは? 幾つかの基準で選んだ結果、これまでの映画シリーズにもテレビアニメにもかかわっていない佐藤雅将が選ばれた。
今年9月には映像がひとまず完成。声入れのアフレコが始まったが、「最後まで楽にならなかった」とプロデューサーの柴田宏明は振り返る。「尾田さんが信頼して任せてくれたから、スタッフは1ミリでも良くしようと。追い込みの作業は激しかった」
最後に尾田はこう語った。「ドラゴンボールという漫画が世を席巻したとき、描いた鳥山明さんは楽しくて仕方ないだろうと思った。次の展開は彼の頭の中にしかないんだから。僕もいつかあっち側に立ってやろうと思いましたね」。
2009/12/06,日本経済新聞 朝刊より