日本のものづくりへの信頼を揺るがす問題が相次ぐ中、ものづくりの現場を題材にしたマンガがブームになりつつある。一般にはあまり知られていない技術者の素顔が関心を集めているようだ。
コミックエッセー『シブすぎ技術に男泣き!』(中経出版)は、初版はわずか7千部だったが、1月下旬の発売以来増刷を重ねて7刷8万7千部に到達。ものづくりに関心のあるビジネスマンなどから支持されているようだ。
著者は、やすりがけが特技という元エンジニアの見ル野栄司。
「技術者の成功談ばかりを取り上げるテレビ番組が嫌い。工場見学を題材にした番組でもそこで働いている人たちのことが気になる」と見ル野は言う。
決して日の当たらない仕事に、精魂を込める人たちがいることを伝えたいと同書に思いを込めた。
『シブすぎ~』のヒットで、ジャンルとしての認知も進みつつある。同書と『とろける鉄工所』(野村宗弘著、講談社、3巻まで既刊)などを並べて売る東京・八重洲ブックセンター本店のような例も出てきた。
『とろける~』は小さな鉄工所の日常をコミカルに描くマンガ。『シブすぎ~』同様、そこにいるのは等身大の職人たちだ。昨秋、初めて開いたサイン会には、普段はほとんど見られない作業着姿の中高年男性や、若い女性も訪れたという。
旋盤工としての経験を生かし、小説・エッセーなどで町工場を描いてきた小関智弘氏は「昔は町工場の作業風景や田植えなど、ものづくりの現場を見る機会が日常的にあった。今はモノと人の距離が離れすぎた。マンガという手に取りやすいものが、その距離を近づけてくれるといい」と語る。
2010/03/07, 日本経済新聞 朝刊より



