県域免許にほころび、地方局網の再構築促す地デジ完全移行

地方テレビ局99社の売上高は平均61億円(2009年度)。広告収入の落ち込みが続き、2008年度は44社が最終赤字を計上、2009年度も33社が最終赤字だった。ぎりぎりの経営に、テレビ放送のデジタル化に伴う巨額投資負担が追い打ちをかけている。

経営規模の小さい地方局を守ってきたのは放送法に基づく県域免許制度だ。各社の放送地域を各道県内に限定。政府が免許で新規参入を管理し競争を抑制してきた。

「電波銀座」の異名を持つ山口県下関市。中心部や北部では福岡県の放送電波も受信できる。山口が民放3局なのに対し、福岡は5局で全系列を網羅。地元の放送を見てほしい県内放送局にとっては頭痛の種だ。各局は福岡にアンテナを向ける視聴者を取り込むため、対岸の北九州市のホテル屋上に共同で中継局を開設している。
山口朝日放送の井出泰成常務は「キー局から配信を受けない自主制作番組の比率を高め、下関を含む県内情報を充実させている」と番組面の努力もアピールする。

デジタル化は下関市のような同制度の「ほころび」も広げている。
CATV局が電波の届かない難視聴地域でも地デジを視聴できる手段として業容を拡大。さらに県境などに電波受信設備を置き、他県の放送も視聴できるようにする「区域外再送信」を売り物に攻勢をかけているためだ。
「もともと民放が3局あるだけで厳しいのに、第4、第5の局が入ってくるのは絶対にノーだ」。高知放送の山本邦義社長は県内のCATV局の動向に神経をとがらす。CATV局が県内に系列局のないキー局2系列の番組を放送する動きが広がり、「経営に直結する問題」と危機感をあらわにする。
CATV局が区域外再送信をするには民放側の了解がいる。民放側が反発して争いになると「大臣裁定」に持ち込まれ、これまではCATV側に軍配を上げるケースがほとんどだ。視聴者の選択肢は広がるが、山本社長は「県域免許制度の考え方と明らかに矛盾する」と不満をもらす。

「地方局の経営は厳しい。安心してデジタル化に取り組めるようにしてほしい」。通常国会終盤の6月9日、日本民間放送連盟の広瀬道貞会長は原口一博総務相と会い、放送法改正案の会期内成立を訴えた。キー局の地方局への出資規制を緩和し、地方局を支援しやすくするのが改正案の内容だったが、会期末に間に合わず廃案となった。

地方経済の低迷は深刻だ。「県域」による保護が今後も続いたとしても、各社の存続が保証されるとは限らない。地デジ完全移行の期限を1年後に控え、矛盾と弱さがあらわになる地方局の経営。キー局の支援余力も限られる。地方局ネットワークの将来像を描く作業が待ったなしに迫ってきた。

2010/07/22,日本経済新聞 朝刊より

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