水と油のアキバ系とシブヤ系融合、ダサかっこいい渋秋系ギャル増加中

東京・渋谷でアニメやマンガの要素をファッションに取り入れるギャルを数多く見かけるようになった。オタクの聖地といわれる東京・秋葉原にも、今まで近寄りもしなかったギャルたちの姿が。水と油と思われた双方のカルチャーを自由に楽しむ、いわゆる「渋秋系ギャル」の姿が目立ち始めた。

ギャル御用達の店が集まる「SHIBUYA109」。ここで売り上げを前年比2ケタで伸ばしているのが「チュチュア」。
アームウォーマー付きのTシャツに、バレリーナがはきそうなチュチュスカート。腰には銃弾をデザインしたベルト、首にはチョーカーを巻き、ゴーグルやクロスのネックレスもさげる。そして頭にはきらきらと輝く特大リボン。
ごてごてとした装いの過剰さはギャルだが、ピンクに白いフリル、ハードな印象の雑貨類がこれまでのギャルファッションには見られなかった要素だ。アニメに出てきそうなキャラクターの雰囲気が周囲の店と明らかに違う。
「コスプレのようだけど、私にとって普段着。街ではじろじろ見られるけど、かえって気分はアゲ」と販売員の名取さんはけらけら笑う。

Bunkamura近くに店を構える「ギャラクシー」もアニメ風の派手な色・柄で前年の8割増の売り上げを記録する。今秋物では1980年代のアニメ「魔法の妖精ペルシャ」をプリントしたTシャツが登場。10~20代の多くはアニメの存在を知らないが、ちょっと古くさい絵柄の“ダサかっこいい”感じが「何よりかわいいでしょう」とディレクターの岸ひろみさん。5000枚が瞬く間に完売。「アニメがダサい対象から、かっこよくかわいいものに移った」と岸さんは確信した。
当初アニメテイストを入れることに周囲は「ギャルから気持ち悪がられる」と反対した。「アニメ好きを嫌悪する変な偏見があった」と振り返る。
流行に上手に乗るギャルたちも、岸さんによれば購買マインドは「基本的にはコンサバ」。目立ちたい半面、極端に早いものには手を出さない。ある程度見慣れ、雑誌などが取り上げて「着てもいい」という確証を得てから購買に動き出すという。

ギャル誌「ポップティーン」(角川春樹事務所)は発行部数が50万部を突破した5月号の表紙で、創刊以来初めて「萌え」の文字を使った。6月号は「アニ盛り」と題し、アニメの主人公風ファッションを街仕様にしたスタイルを紹介している。
アニメスタイルを取り上げた理由を、編集部の宍戸由佳さんは「ギャル服全体が花柄を多用するなど甘い傾向になり、それに飽きる読者が出てきた」と説明する。これまで足を踏み入れたことのない世界だけに新鮮。しかもあくの強さは余計にギャルたちを引きつけたわけだ。

昨年10月に「MIG(ミグ)」というフリーマガジンが創刊した。MADE IN GIRLの頭文字を取った同誌は主に20代の女性たちがつくりだすファッションや音楽といったガールズカルチャーを写真と文字で切り取る。カバーするエリアは渋谷、原宿、新宿、それに秋葉原だ。「この街抜きに、今の女の子たちのリアルな姿は語れない」と代表の田口まきさんは話す。

では、ギャルたちは本当に秋葉原に出没しているのだろうか。ゲームセンター「クラブセガ秋葉原新館」の3階にある写真シール作製機コーナーには渋谷で見掛けそうなギャルたちが続々と訪れる。女子大生の宇佐美優希さんと鈴木麻子さんは「ちょっと若返りたくて」と女子高生の制服を着てパチリ。キャバクラ嬢のように巻き髪を盛ったギャルは「メイド喫茶のバイト前に寄りました」。萌えに興味を持つギャルには、発信地である秋葉原も魅力的に映りだした。

昨年8月、アキバ初の本格的なクラブとして誕生した「MOGRA」ではアニメソングやゲーム音楽が大音量で流れる。2、3年前から渋谷のクラブがアニメソングをかけ始め、800人動員するイベントもあるほど。その盛り上がりを見て「アキバがはぐくんだ音楽なのに、聞ける場所がないのはもったいない」とモエ・ジャパン(東京・千代田)社長の福嶋麻衣子さんが開業に踏み切った。昨年末からクラブ好きやギャルなどが来店しはじめた。

こんな渋秋系ギャルも、翌日になるとカジュアルに古着を着たり、大胆に肌を見せるセクシー系に走ったりと「首から上は変えずに、下の格好を気分に応じて変幻自在に楽しんでいる」(ポップティーン編集部)。1つのスタイルにこだわらず、自分を表現する手段として外見は自由で多彩。あくまでも内面で勝負というギャルたちは、けっこう成熟しているのかもしれない。

2010/08/04,日経MJより

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