「大人と、子供の中の大人心」に訴える、ドリームワークス・アニメーションCEOに聞く

ドリームワークス・アニメーションCEOジェフリー・カッツェンバーグ氏は、パラマウント映画での下積みを経て、1984年にウォルト・ディズニー・カンパニーに転じ、映画制作部門のトップに抜擢される。「リトル・マーメイド」「美女と野獣」「アラジン」「ライオン・キング」などのヒットでアニメ部門を立て直した。実写でも「プリティ・ウーマン」「天使にラブ・ソングを」のヒットを送り出し、ディズニー映画に第二黄金期をもたらした。しかもCGアニメの将来性を予見し、1991年にはまだ1本も長編映画を作っていなかったピクサーと配給契約をした。
1994年に上司との不仲が原因でディズニーをクビになると、スティーブン・スピルバーグらと組んでドリームワークスを設立した。同社で「プライベート・ライアン」「グラディエーター」、アニメの「シュレック」などのヒット作を生み出した。
現在はアニメ部門を分離したドリームワークス・アニメーションCEOとして3Dアニメ製作に情熱を燃やしている。
カッツェンバーグCEOに週刊東洋経済がインタビューしている。


・今後すべてのアニメを3Dで作ると発言したが

「過去10年、家庭での映像体験は進化したが、映画館は全く変化がなく、それが映画産業の衰退を招いた一因だ。3Dの登場で我々はDVD市場の縮小分を上回る収入を手に入れることができる。ただし、他社の中には2Dで作り3D変換した映画もあるが違和感があり、まあまあの3D映画にしかならない。興行主は3Dに割増入場料をつけているが、それに見合う素晴らしい映像を観客に見せないと、あっという間に見切りをつけられる」

・最初から3Dで企画するとストーリーや演出に制約を生じないか

「あると思う。でも製作するたびにノウハウを蓄積している。3Dという新分野の人たちはやる気にあふれ、すぐに解決できる」

・恋愛ものや芸術作品も3Dになる可能性は

「理論的にはイエスだが、今は見守っている段階。人間は3Dで見るのが自然なのだから、将来は絵画も写真も雑誌だって3Dになっていくはずだ」

・ご自身の発言に「ディズニーは子供と、大人の中にある子供心に向けて映画を作るが、ドリームワークスは大人と、子供の中にある大人心に向けて映画を作る」とあるが、ディズニーと正反対のコンセプトをとる理由は

「ディズニーの理念を愛していたが、16年前にディズニーを辞めてドリームワークスを設立したとき、新しい理念を考えようと思った。ディズニーのまねとは言われたくなかったから。何作か試行錯誤する中で、その基本理念が生まれてきた。ドリームワークスが作ったアニメをご覧いただければおわかりの通り、ウィットに富んでテーマもアイディアも複雑なものが多い。ここで言う大人たちとは自分たちという意味でもある。自分たちが楽しめる映画を作るのが大前提だからね」

・最新作の「ヒックとドラゴン」はディズニー的な感じがしたが

「シュレックのような皮肉っぽさは影を潜めた。今は年に3本作っているから、バラエティに富んだものにしないと」

・ピクサーは自前の人材育成に積極的だが、ドリームワークスは

「最近のピクサーを知らないので比較のしようがないが、ピクサーをやめて当社に来る人は少ないし、そもそもCGアニメの歴史が短いから外部に経験豊かな人材はそう多くない。優秀な人材は自前で育てるしかない。当社には2000人の社員がいるが、定着率は97%で入社したらほとんど退職していない」

・歴史に残る名作を次々と生み出す秘訣は

「そんな秘密があったらボトルに入れて売り出すよ。私は映画について考えるのが大好き。そして映画館で私の作った映画を楽しんでくれている観客の姿を見るのが最大の喜びだ」

・日本の「宮崎アニメ」は世界では批評家に絶賛されても、日本国内ほどヒットしないが

「ミステリーだね。宮崎駿氏は現代におけるウォルト・ディズニーといえる。彼の絵は美しく、娯楽性も芸術性も兼ね備えている。なぜ世界中で大ヒットしないのか不思議で仕方がない。でも、われわれの映画だって世界中で大ヒットしているのに、日本では宮崎アニメほどヒットしない。これも不思議な話だ」

週刊東洋経済2010年8月14日、21日合併号(8月9日発売号)より要旨

週刊 東洋経済 2010年 8/21号
週刊 東洋経済 2010年 8/21号

Comments are closed.