パナソニックやソニーといった電機大手が家庭用テレビなどで華々しく新製品を競うなか、日本ビクターは3D液晶モニターや3Dへの変換機器、3D映像制作など、業務用に特化して大手と一線を画す戦略だ。
7月下旬、ビクターの関連会社、ビデオテック(東京・渋谷)の編集ルームでは、「グラビア業界初の3D」の触れ込みで9月にポニーキャニオンから発売される川村ゆきえさんのビデオの編集作業が行われていた。
ビデオテックが3Dを手掛け始めたのは30年前。サメの恐怖を描いた「ジョーズ」など3D映画の人気が高まった1980年代初頭だ。その後、ブームは下火になったが、再び3D映像が注目される昨今まで「技術やノウハウを(ビクターとともに)温めていた」とビデオテックの森俊文制作本部長は話す。
同社は2台のカメラで3Dを撮影するだけでなく、1台のカメラで撮った2Dを、3Dに変換するサービスも4月から始めた。現場では全編を3Dで撮るのではなく、2Dをもとに作った3Dを織り交ぜることが多い。すべて2台のカメラで撮るとコストがかさむほか、被写体が遠い場合だと立体的に見せにくいなど得手不得手があるからだ。
そこで活躍するのがビクターが2月に発売した変換機器「イメージプロセッサー」。2D映像を入力すると、瞬時に臨場感のある3Dに変換して出力する。価格は250万円前後で放送局や映像制作会社が主な顧客。
東映が公開している3D映画「仮面ライダーW」「天装戦隊ゴセイジャー」や、人気バンドのドラゴンアッシュが6月に発売した曲の3D音楽ビデオでも使われた。
「2D―3D変換」の映像は、2台のカメラで撮った“本家”と比べると原理的に立体感は劣る。ビクターの機器は独自開発したアルゴリズムで色合いなどから奥行きを解読し立体的に表現する。「自然な3Dを作り出す技術は簡単にまねできない」と長谷川順一コア技術開発センター第六部統括部長は胸を張る。大手が発売中の3Dテレビでも一部採用されているもようだ。
コンピューターを使って手作業で2Dを3Dに仕立て上げることもできるが、莫大なコストと時間がかかる。スポーツなど生中継では間に合わない。サッカーのワールドカップの3D中継でも、2Dで撮った映像の変換に使われた。
ビクターは2008年から業務用の3D液晶モニターも販売している。米ハリウッドの映画会社でも使われており、撮影した3D映画の出来栄えを確認するときなどに活躍中。業務用3Dモニター市場では、韓国のヒュンダイITとシェアを二分するトップメーカーだ。
資本力で大手に劣るビクターが、テレビなど3Dの主戦場で大手とガチンコ勝負しても勝ち目は薄い。とはいえ、熱い視線が集まる新市場をただ傍観するのももったいない。軒並み苦戦を強いられている中堅AVメーカーがこれから生き残る道として、ビクターの3D事業は一つの手本になりそうだ。
2010/08/10, 日経産業新聞より