東宝、東映、松竹の邦画大手が3D映画に相次ぎ参入する。先行する洋画で興行収入が100億円を超すヒット作が続いているため、これまで様子見だった3社もブームに乗り遅れまいとようやく重い腰を上げた。昨年の興行収入が3年ぶりに増加に転じるなど国内映画市場は復調傾向にあり、3Dで弾みを付けたい考えだ。
東映が7日公開した3D特撮映画「仮面ライダーW(ダブル) FOREVER AtoZ 運命のガイアメモリ」。週末興行ランキングで上位10位内に入る同作品は、同社が初めて本格的に制作した長編3D作品だ。
仮面ライダーシリーズを統括する白倉伸一郎・執行役員は「3Dの撮影・編集手法を半年間研究した」と語る。当初は映像の一部に限り3D化する予定だったが、試行錯誤の末「全編対応できる」と踏み切った。今年4月から2カ月かけて撮影し、その後1カ月で編集作業を終えた。白倉氏は「こんなに短期間で作り上げられるのかと、同業他社からも驚きの声が上がったほどだ」と手応えを感じている。
興収155億円を記録した米3D映画「アバター」の大ヒットをきっかけに、今年の映画業界は3Dブームに沸く。春以降「アリス・イン・ワンダーランド」や「トイ・ストーリー3」など大作が公開された。17日発表の今月15日までの国内興収では、トップ10のうち1位のアバターを含む4作品が3D洋画だ。
けん引役となった3D作品の役割は観客動員だけではない。入場料も高く設定でき、興収増につながる。
これに対し、邦画では今年に入って興収が100億円を突破した作品はゼロ。10億円以上の興収を記録した3D作品もない。こうした状況のなか、邦画最大手の東宝がついに動いた。
映画会社別の年間興収シェアで7年連続1位を続ける東宝が9月に公開するのが、同社初の3D配給作品「THE LAST MESSAGE 海猿」だ。全国300館以上で公開する。当初2Dで撮影したが、後から3Dに変換した。テレビドラマを映画化した海猿は前作が71億円の興収を記録したヒットシリーズ。制作元のフジテレビジョンから「天然ガスプラント内での大規模火災など迫力ある映像を3D化したい」と提案があったため、制作予算を積み増した。
東宝はこれまで様子見ムードが強かった。3Dの制作費用は、やり方にもよるが1.5倍に跳ね上がることもあるといわれる。その分興収が増えるのか、各社は確信を得られなかった。しかし、「(3Dの普及を)アバターの成功が決定的にした」(東宝の市川南・映画調整部長)とみて一歩踏み出した。一定の興収が期待できる続編から入ることで制作費回収のリスクを回避。その結果も見極めなければならないが、「来年以降も実写、アニメで3D化の企画が持ち上がっている」(同)とむしろ姿勢は“前のめり”になりつつあるようだ。
邦画大手では松竹も3D展開に乗り出す意向。まだ自社制作・配給の3D作品はないが、映像本部の関根真吾編成部長は「来年に数本の配給を検討している」と明かす。シニア向け映画を中心に定評のある同社がどんな3D映画を展開するのか、業界内の関心も高い。
2010/08/18, 日経産業新聞より