客同士が情報交換しながら、プロの技も学べる「ホビーカフェ」が続々と登場している。カルチャーセンターや専門の教室に通うよりも気軽に参加でき、料金も手ごろ。同好の士が席を並べてお互い刺激し合う雰囲気が、技術を磨く意欲を高めるといった効果もあるようだ。
名古屋市に今春オープンした漫画喫茶「漫画空間」。店内中央には、漫画やイラストを描くための専用の机が6席並ぶ。約1万冊の漫画をそろえた「読むスペース」とは間仕切りで分けられ、利用者は隣り合わせでそれぞれの制作活動に励む。ペン類やインク、トレース台は自由に使えるほか、絵の背景に使うトーンなどの購入が可能。通常の漫画喫茶と同様、コーヒーや清涼飲料はもちろん飲み放題だ。料金は1時間480円、3時間パックで980円と通常の漫画喫茶並み。イラストレーターや漫画家を目指す若者の来店も目立つという。プロの漫画家による描き方講座も開いており、内藤店長は「この店が漫画家デビューのきっかけになってくれれば」と期待を込める。
名古屋市に住む現役の漫画家の寝猫さんは常連客の1人。「自宅と違い料金を払って利用するので、『時間内に仕上げないと』と気合も入る」と笑う。気分転換も兼ね月に2~3回通っているが、「周りでみんなが黙々と描いている姿をみると自分も刺激を受ける」という。
プラモデルづくりに専念できる「模型カフェ」として人気を集めているのは大阪市に今春オープンした「iiba(イーバ)」。工作道具などを自由に貸し出し、製作途中の作品は保管してもらえる。来店客の約8割は少年時代に「ガンプラ」などに夢中になった30~40代の男性だ。
料金は3時間1000円からで、店内には撮影ブースも用意している。客の多くは常連で、完成した作品を互いに批評し合ったり、コンテストなどの情報を交換する場にもなっている。
小説家やクリエーターを目指す人向けの「文章バー」も登場した。東京・新宿で2月に開業したダイニングバー「Fumi’s Bar(フミズバー)」だ。店のオーナーで作家の高橋フミアキさん(49)が講師となり、来店客一人ひとりに声を掛けながら、上手な文章の書き方などを教えている。
「授業」は月に4日ほど開き、参加費は1時間1000円。「ブログの文章をうまく書けるようになりたい」など、趣味の延長で参加する人も目立つ。
高橋さんによると、「互いの距離が近いので意思疎通もしやすい」。9月分の予約はすでに満席。「開催日を増やすことも検討中」(高橋さん)だ。
日本ホビー協会(東京・台東)によると、本来は自宅で親しむような趣味を店で楽しむホビーカフェが広がるきっかけとなったのは、2~3年前にブームとなった「手芸カフェ」だ。最近は陶芸、写真撮影などの趣味が楽しめるカフェも登場し、カルチャーセンター並みに内容が多彩になってきたという。
いわゆる「趣味」「お稽古」のたぐいは多種多様で、その数だけカフェが生まれる余地はある。新たな「学びの場」の形態として、各地にホビーカフェが定着する可能性は高そうだ。
2010/08/27, 日経MJより