熱心なファンに支えられ、CD不況の中でも好調が続くアニメソング(アニソン)。
アニソンの歌い手が日本のミュージシャンや声優らから外国人に広がり、日本のポップカルチャーが言葉や文化の壁を越えて親しまれるのを後押ししている。
ボサノバのリズムに乗ってアニメ「天才バカボン」の主題歌がジャズクラブに流れる。歌うのは7月に初めてアニソンをボサノバに編曲したカバー集「アニメンティーヌ」を出したフランスの歌手、クレモンティーヌ。
来日公演に先立ち「ジャパン・エキスポ」に初出演。「うる星やつら」の主題歌「ラムのラブソング」などをパリっ子の前で披露した。「フランスでも日本のアニメが放送されているから、みんなよく知っていて好評だった。今までジャズを中心に歌ってきたけど、今回は子供からお年寄りまで、新しいファンが聴いてくれた」と顔をほころばせる。
幼少期に「キャンディ・キャンディ」を見て育ち、今は子供たちと「崖の上のポニョ」などを楽しむアニメ好き。1992年に日本制作のアルバムを発表して以来、ジャズやボサノバを中心に、日本を第二の拠点にして活動してきた。
「最初のころは『経済大国で出稼ぎしている』とフランスでたたかれ、不愉快な思いもした。でも10年くらい前から、アニメなどのポップカルチャーが大人の間でも浸透して、日本という国、そして私への評価はガラッと変わった。今では彫刻家まで『日本に行くにはどうすればいい?』って聞いてくるわ」と笑う。
今月中旬、カナダ・モントリオールで日本アニメの見本市「オタクソン」が開かれた。5000人の観客の前でアニソンを披露したのは、地元ケベック州出身の女性歌手、HIMEKAだ。
日本アニメにみせられ、2008年に単身来日。アニメ放送局のコンテストで優勝し、アニソン歌手になる夢をつかんだ。今回は2年前に故郷をたって以来、歌手としての凱旋帰国という晴れ舞台。地元が生んだ異色のヒロインを観客は大歓声で迎えた。
1時間半にわたり、計13曲を熱唱。「みんな私の曲をよく知ってくれていて、予想以上に温かかった。10年前は日本アニメのファンはまだアンダーグラウンドな存在だった。5年前、オタクソンが始まった時は規模が小さかったけど、今は巨大会場で大きなイベントになっている」と様変わりを実感した様子だ。
スタジオジブリ作品の楽曲にも多くの外国人歌手が携わる。最新作「借りぐらしのアリエッティ」の主題歌を歌ったのはフランス人のセシル・コルベル。日本のテレビの歌番組に出演した経験もあるスウェーデンのメイヤは先月、ジブリ作品のカバー集「アニメイヤ」を出した。
クレモンティーヌらの作品を企画したソニー・ミュージックジャパンインターナショナルは「外国人が英語や仏語などでアニソンを歌うことでアジアなどへの輸出がしやすくなる。原曲の良さを生かしながら新しい解釈も楽しめるのでは」と期待をかけている。
2010/08/31,日本経済新聞 夕刊より