週刊東洋経済11月5日号(10月31日発売号)第2特集では、クオリティとコストのバランスに板挟みとなっている日本のエンタメ業界の舞台裏を特集している。演劇、音楽、アニメ、映画、DVDの各ジャンルの中から、アニメの制作費の現状と若手の低賃金問題、フルCGの導入で現状の制作システムを変革しようとしている2012年秋公開予定の劇場アニメ「009 RE:CYBORG」の制作に取り組むプロダクションI.Gとサンジゲンを取り上げてみる。
2010年のメディア開発綜研の調査によると、テレビアニメ30分1話の制作費用1100万円の内訳は次の通り。
原作:5万円、脚本:20万円、演出:50万円、制作進行:200万円、作画監督:25万円、原画150万円、動画:110万円、仕上げ:120万円、美術(背景):120万円、撮影:70万円、音響制作:120万円、材料:40万円、編集:20万円、プリント:50万円となっている。
このうち、動画については1話あたりの枚数を5000枚とすると、動画1枚の費用を220円と試算している。これは30年前とほぼ変わりなく、若手のアニメーターが生活苦から業界を去る一因となっているとの指摘がある。
現在のアニメは30年前に比べて情報量が格段に増えており、日本アニメーター・演出協会(JAniCA)のヤマサキオサム代表は「30年前は月に1000枚描いて1人前と言われたが、今は月に500枚描ければいいほう」という。これが若手アニメーターの低賃金の一因であり、「若手アニメーター育成プロジェクト」はこの現状を解消しようとの試みだが、決定力に欠けるのが悩みだ。
2012年秋公開予定の劇場アニメ「009 RE:CYBORG」では、ロボットやメカだけではなく人間の表情も含めてフルCGで描くことに挑戦した。
プロダクションI.Gの石井朋彦プロデューサーは「日本人は手描きアニメが好き。ハリウッドで作るようなリアルなCGアニメは日本では売れない」という。そこで手書き風のBGアニメを作れないか悩んでいたところに出会ったのは、サンジゲンの松浦裕暁代表。「キャラクターのモデルさえ作れれば、絵を描けない人でも動かせる」と松浦氏。現時点では試行錯誤が多い分、手描きよりコストがかかるが、将来は安く早く作れるはずとの自信がある。
もっとも手描きアニメの良さを捨て去り駆逐するつもりなどなく、キャラクターデザインやCGモデリングには手描きアニメーターが必要だ。ベテランアニメーターの活躍のチャンスが広がると同時に、制作システムが従来と変わるために若手の賃金問題改善のチャンスもある。このような取り組みが日本のアニメーションの制作環境改善につながることが期待されている。
![週刊 東洋経済 2011年 11/5号 [雑誌]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/61Qouq-bPNL._SL160_.jpg)
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