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アニメの未来(上)宮崎駿監督に聞く――今につながるロマンを

この夏の劇場公開アニメーション監督、宮崎駿と押井守への日経のインタビュー抄録。今回は宮崎監督。

  ■「子供の励みになる映画」が目標。新作「崖(がけ)の上のポニョ」もさかなの子ポニョと五歳の宗介の友情や思いやりの大切さをストレートに描く。

肝心なこと、大事なものは直感でわかる。そんな子供が見て分かる映画にしたつもり。
子供が見るのに値するものを作るのは相当に大変なこと。ただ刺激を与えればいいわけではないから。最初は男と女の皮肉な物語になるんじゃないかなどと話していても、いつの間にか終わりに向かってみんな善人になる。

  ■圧巻は豊かな海の表現。CGを使わず、手描きにこだわった。作画数はこれまでで最も多い十七万枚にのぼる。

波を魚で描いてしまおうと決めたとたんに、楽になった。五歳の子供にとっては波が生き物に見えるかもしれない。
鉛筆の線をあえて残す「実線主義」を貫いた。水道をひねると黒い線のしぶきが飛ぶ。水を水色や白っぽく描くより線の方が潔い。輪郭を描いて色をつけていったら、浮世絵に似ていると気が付いた。

  ■外国への下請け発注、安易な大量生産――。日本のアニメの現状に強い危機感を持つ。

作品の根幹にかかわる部分も流出し、現場が空洞化しつつある。スタジオジブリでは来春、思い切って新人養成に踏み切る。二十人くらい採用して、こちらもそれなりの覚悟を固めて待遇する。バーチャルなものばかり見て育った若い人たちが鉛筆一本でやっていくには弱点もあるだろうが、自分で見て、考え、描くことを覚えてほしい。
新人の養成は名古屋でやる。東京にあるのは過熱の中の孤独だけ。ここで得られる今日的な刺激はどこの地方都市に行っても同じだ。はやりに興味を持っても、同時代のものでアニメーションを作っちゃいけない。僕らの作品は時間がかかる分、少し先を見ていないと時代遅れになる。
最近スタッフが比較的新しい日本の児童文学五十冊の粗筋を書き出したが、アニメーションにしたいものが一つもなかった。学校に行かないとか、親が離婚したとか――。どうして狭いリアリズムの中でうろうろするのか。自分たちの文化や歴史に根ざし、なおかつ今の生活につながるところでロマンを書けないものかと、がっかりしました。

 みやざき・はやお 一九四一年東京生まれ。七九年「ルパン三世 カリオストロの城」で劇場映画を初監督。二〇〇二年に「千と千尋の神隠し」でベルリン国際映画祭金熊賞を受賞。優れた映画作家に贈られるベネチア国際映画祭栄誉金獅子賞を〇五年に受けた。

ヘッドラインは2008/07/28, 日本経済新聞 夕刊



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