各地に広がる「オタク町おこし」、高い購買力に期待
アニメや鉄道趣味など「オタク」層を狙った町おこしが各地で広がっている。
20~30代男性が中心のオタクは購買力が高いとされ、各地の商工会や鉄道会社ではオタクの特性に配慮しながら売り方を工夫し、地域経済にオタク効果を取り込もうと懸命になっている。
・埼玉県鷲宮町「らき☆すた」
都心から電車で約1時間、人気アニメ「らき☆すた」の舞台となった鷲宮神社は週末には駐車場にアニメのキャラクターのイラストやステッカーが張られた「痛車(いたしゃ)」が目に付く。興味のない人からみれば異様な光景。
オタクの「聖地巡礼」とは、アニメや漫画の舞台に足を運び思いをはせること。
鷲宮町では昨年春ごろから「巡礼者」が目立つようになった。
放っておけばファレスなどに流れてしまう客層を鷲宮町商工会は、地元限定アニメグッズの売り方の工夫で地元商店に誘導することに成功した。
イラスト入りの絵馬の携帯ストラップ(630円)は商工会が12種類用意し、1店舗での販売を2種類に限定し「ファンが多くの店を買い回りするように仕向けた」(同商工会)
当初はオタク効果を疑問視する店も多く、昨年12月の開始時には参加店舗が17店だったが、1000個が30分で完売することを目の当たりにし、2月には60店にまで広がった。
物販など直接的な経済波及効果は1億円超と同商工会は試算する。
商工会が一番の成果とみるのは「らき☆すた」ファンのたまり場となる店ができ、鷲宮町に足を運ぶ頻度が高まることだ。中華料理店「門前飯店」の店主は「週末の平均客数は100人程度で従来の5割増。オタクの子って、すいている時間を狙って来てくれるんだよね」と話す。
・秋田県羽後町「あきたこまち」
うご農業協同組合(JAうご)は9月、人気イラストレーターの西又葵さんのイラスト入りの「あきたこまち」をネット限定で販売したところ注文が殺到、用意した1000袋が数日で完売し、ちょっとした“米騒動”が起きた。購入者の8割が20~30代前半。
通常より3割強高い5キログラム2730円で販売しているが、リピーターもおり11月上旬で注文数が2300百件、30トン売れた。
今回の商品化は羽後町の地元商工会の夏祭りに西又さんがゲストとして招かれたことがきっかけで、今後JAうごでは西又さんのイラストを他の農産物にも採用していく。
・コミックマーケット「地方開催」
日本最大の漫画同人誌の即売会「コミックマーケット(コミケ)」は2010年3月に地方で開催される。主催者のコミケットが開催地を公募したところ、全国約20地域が応募した。
通常の都内での開催期間中約50万人の集客力があり、市街地の活性化を期待し応募した地域が多かった。しかしコミケットの担当者は「コミケ自体は点でしかなく、町おこしにつなげるには面展開が必要なのだが」と指摘する。
・三陸鉄道「久慈ありす」
岩手県の第三セクター三陸鉄道は10月11日、イベント列車「久慈ありすのスウィーツ列車」を運行し、事前指定40席は事前に完売し、当日はキャンセル待ちが続出したほどの人気だった。
予想外は9割以上が県外客だったことで、同社は「これまでイベント列車を企画しても地元客ばかりだったが、全国から集客する足がかりが得られた」と話す。
久慈ありすとはタカラトミーの子会社が販売するフィギュア「鉄道むすめ」のキャラクター。長い髪が印象的で、三陸鉄道の元女性運転士がモデル。制服などは実際のものが再現されており、「アニメ好きの鉄道マニアの間では人気の高いキャラクターの一つ」(タカラトミー)という。
今回の成果を踏まえ、同社では今月末から宮古駅などで久慈ありすのフィギュア(630円)の販売を始める。開業25周年となる来年4月には大規模イベントを開く予定。
・銚子電気鉄道「ぬれ煎餅」
自社ホームページ上で「電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです。」と窮状を吐露した銚子電気鉄道は、鉄道オタク活用の先行事例だ。2年前ネット上の掲示板で話題になり、翌日から副業として販売していた「ぬれ煎餅」に注文が殺到した。
名ぜりふを書いた山崎勝哉事業部次長は「洗いざらい告白したことがマニアの琴線に触れたのでは」と話す。
ぬれ煎餅は現在も売れ続け、2007年度の副業収入は前の年度比38%増の4億2400万円で、本業の鉄道収入の2.6倍にものぼる。
成功の要因はオタクから主婦らに購買層が広がったこと。ぬれ煎餅は10枚入り820円と高価だが、コメなど原材料はすべて国産で、食の安全・安心志向が中高年女性をつかんだ格好だ。
これら各地の動きに対し「オタクを狙った町おこしが受けているのは、ファンにとってその場所にリアリティーを感じられるから。関連イベントを開催すれば一定の経済波及効果は見込めるが、課題はその効果をどう持続させるか。その場所ならではの関連グッズの充実、新たなストーリー展開が欠かせない。」(日本政策投資銀行地域振興部・藻谷浩介参事役)と話す。
2008/11/12, 日経MJより
この記事は現在コメントを受け付けておりません