日経中部版「波頭を越えて日本ブラジル移民100年」連載から。
記事では一人のブラジル人女性がコスプレ世界大会世界一になるまでの姿を通して、ブラジルに根付き始めた日本発のサブカルチャーの事情を伝えている。
ジェシカ・カンポスは、サンパウロ州カンピーナス市育ちの21歳。2年前にアニメなどの登場人物に扮する「コスプレ」と出合い、自分を大きく変える一歩を踏み出した。
初めての衣装はオンラインゲームのキャラクター。友人に誘われてサンパウロ市のイベントに参加した。アニメやゲームは好きだったが、いつもと違う自分を見せるのは怖かった。しかし思いもしない体験が待っていた。「一緒に写真を撮って」会場では何人もの人とカメラに収まった。「みんなに褒められている」と思った。
それからの彼女はアニメの主人公の衣装を考え、リハーサルを重ねる。おばあちゃんも衣装作りを手伝ってくれた。
ブラジルではコスプレ人口が増加しているが、彼女はほかの人たちとは違い、舞台での高得点が目的ではないと考えている。シャイな自分は主人公を好きになり、命を吹き込むのだと。
今年夏の名古屋、勤めていたコンピューター会社に辞表を出してまで臨んだ彼女は、コスプレ世界大会のブラジル代表として晴れ舞台に立った。そこで待っていたのは世界一の栄誉。日本は「ファンタスティックな国」だった。ハイテク、伝統、礼儀正しさ。テレビの中の日本がそこにあった。
いま、ブラジルでは日本のアニメやマンガが人気だという。日本のマンガを翻訳出版するジェー・ビー・コミュニケーション(サンパウロ市)によると、5年前までは市場のほぼ100%をアメリカのコミックが占めていたが、今では日本のマンガのシェアが40%に達する。
主人公が幾度となく壁に突き当たり、最後はそれを乗り越える。移民国家のブラジルではマンガが伝えるメッセージが共感を呼ぶ。
2008/12/25, 日本経済新聞 地方経済面 (中部)より