テレビ制作費の大幅削減、雑誌の部数減・休刊、ネット配信の普及など、メディアが転換点を迎えるなか、芸能事務所も新たな経営モデルの構築を迫られている。業界最大手ホリプロの堀義貴社長に、日経産業新聞が戦略を聞いた。
―テレビ局の制作費削減などの影響で通期の業績を下方修正した
「テレビ局をとりまく経営環境が、半年の短期間でこれほど変わることは想定外。ドラマの製作本数が減り、年末年始の特番は再放送番組に変わった。近年好調だった邦画の製作本数も来年は減少する見通しで、(タレントの出演機会を巡る)競争は激しくなるだろう」
―勝ち残るために必要なことは
「主役を100人つくることが目標。主役が100人いれば新人や脇役な300人のタレントを養うことができる。女優、お笑い、スポーツ選手……など、あらゆる分野の人材が電話一本でそろうような事務所をさらに目指していく」
―具体的にはどんな手を打っていくのか
「スターを育てるためには教育と露出機会を確保することが大切。映画への出資本数を増やし、銀河劇場の運営も始めた。お笑いは多少お金がかかっても『俳優座』など有名な会場でライブを開く。こうした施策により、香椎由宇や松山ケンイチ、バナナマンなど新人のブレイクにつながった」
―若者はネットとの接触率が高まっている
「ネットを使った新しいビジネスモデルは検討している。しかし著作権保有者にとって今のところ、ネットはバラ色ではない。重視しているポイントは2点。一つは料金回収の仕組み。さらに重要なのがタレントの露出のコントロールをとれるかどうか。タレントは出荷調整で成り立っている。大物になればなるほど『断るのが仕事』といつも現場に言っている。工業品のようにネットで安く、大量に流通しさえすればスターになれるわけではない」
「タレントは人間だ。一度売れれば一生安泰ではなく、その後10年、30年と食べていけるよう露出を調製しながら人気を維持するのが事務所の生命線。この点をクリアしお金にもなるネットのビジネスモデルは、まだ見たことがない。当社も新しいメディアを活用した事業モデルを検討はしているが、今のところは様子見の状況」
―国内市場だけでは高い成長率は望みにくい
「アジア展開を重視している。韓国から映画の台本が持ち込まれたり、中国のプロダクションが当社に視察にきたりと交流は増えている。当社も韓国の制作会社に出資している。将来は汎アジア市場で通用するソフトを作っていきたい」
「海外展開にはネットは非常に有用だ。違法コピーの問題はまだあるが、日本のコンテンツが世界中で24時間オンラインでつながっていることはチャンス。世界を市場ととらえれば、ネット向きのニッチなヒットでも、一人のタレントにとっては大きなヒットになる」
2008/12/26, 日経産業新聞より