アニメ「機動戦士ガンダム」の生みの親、富野由悠季さんは悪化する地球環境を憂えている。問題解決に期待を寄せるのは若い世代だ。ガンダムが彼らに残したメッセージとは。
・地球環境守る「ガンダム」精神
温暖化、資源の枯渇。地球は疲弊し、切実な状況に陥っている。この先1万年も地球で暮らすためにはどうすればよいのか。僕は大人より若い人の行動に期待している。
理由は簡単だ。大人が死んだ後も若い人は生き延びなければならない。だから若者は未来を真剣に考える。対談で、ある環境ジャーナリストが言った。「ここまで緊張感を持ってごみ問題に取り組んだ時代はない。今の状況は人類がニュータイプ(ガンダムの作品に登場する革新的な人類)になる道の過程だ」と。
若者はリサイクルをよくやっているし、頻繁に物を買い替えない。一方で大人は、右肩上がりで頂点を目指す経済成長、大量生産・大量消費の膨張志向の慣習から抜け出せない。大人は相変わらず「今の若い者は」という言葉遣いをするが、地球環境の視点で見た場合、それは大人のうかつさだ。むしろ問題は若者に寄り添えない大人側にある。
・僕はアニメが嫌い
ガンダムの前、手塚治虫先生原作の「海のトリトン」で初めてテレビアニメの総監督を任された。そのころ、子供に作品を発表する意味が分からなくなっていた。右往左往する中で児童文学の書き方という本に出合い、決定的に引っかかった一文がある。「これは絶対に大事なことだよと話す大人に対して、子供はその時は分からなくても後で絶対に思い出してくれる」
自分の持ち物の中で子供に何を話せるかと、本当に悩んだ。一つしかなかった。ヒーローが単純に正義であってよいのかというテーマ。世の中は勧善懲悪で済む現実ばかりではない。最終話で、ヒーローの主人公の先祖が怪獣の世界を破壊した過去があったために、怪獣が襲ってきたというストーリーを加えた。
原作を勝手に変えたから手塚先生には嫌われた。一方で「アニメの革新」と評価された。勧善懲悪でない物語はガンダムへとつながっていく。もともと僕はアニメが嫌いだし、向いていないとも思う。だからこそ子供にうそをつきたくないし、そこに絶えず賭けて作品を発表してきた。
・僕たちは地球に帰るしかない
この数年、ファースト・ガンダムを見て育った30代とよく話す。特定のファンだけではなく一般にもガンダムが受け入れられていたと、ようやく実感できるようになった。今改めて思うのは、偏ったものの考え方で作らなくてよかったということ。ニュートラルな視点を持つ意味というか、僕のメッセージが届いていたんだと感じるから安心している。
誰かが35億円出したら、映画を一本作る。ガンダムのような劇で“宇宙への移住なんてあり得ない。僕たちは地球に帰るしかない”というメッセージを伝えたい。
詳しくは本紙でご覧下さい。
2009/04/08, 日本経済新聞 夕刊より
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